幕あきました。
毎ステージ、地震に対する対策について制作担当者が挨拶をしているのですが、そのあとに、私も挨拶をさせていただいております。休演日前までの挨拶をこの場に掲載させていただきます。
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ピーチャム・カンパニー代表の川口です。
本日は、このような状況の中、この劇場に足をお運びいただき、まことに有難うございます。心より御礼申し上げます。
先ほど、プロデューサーの森澤から説明がありましたとおり、地震に関しましては、最大限の対策をいたしました。非常時には、劇団側で対応させていただきますので、安心してご観劇いただければと思います。
先日の地震が起こった日、私たちは新宿の稽古場におりました。あまりに大きな地震であったため、一時的に外に避難をした我々は、新宿の高層ビルがゆらゆらとゆれているのを見ました。
その日から、「演劇とはなにか」「演劇になにができるのか」ということを考えざるをえない状況になっております。
「こんなときだからこそ演劇をやるべきだ」という意見や、「非常時なのだから演劇を中止するべきだ」という意見。さまざまな意見がございます。
私も、今回の公演を上演するべきかどうか、非常に悩みました。
ですが、そのときふと思いました。
「こんなときだからこそ演劇をやるべきだ」という意見も、「非常時なのだから演劇を中止するべきだ」という意見も、どちらも「演劇」と「日常」というものを切り分けて考えているのではないか。「演劇」と「日常」というものが別々のものであるという前提に立っているのではないか。
われわれにとっての「日常」、それは「演劇」を続けることです。
今回の震災で被害にあわれた方々に思いを致しながら、われわれはわれわれの「日常」を続ける、「演劇」を続ける。
そう思い、今回の公演の上演を決意いたしました。
今公演「オペレッタ 黄金の雨」は、中沢新一さんの『アースダイバー』を原作に使用させていただいております。新宿という街の猥雑なエネルギーがどこから来るのか、その源泉はなんなのか。それを探る演劇となっております。
1697年。新宿という宿場町が、新宿という地名が、まさに誕生しようとする、その瞬間を舞台にしております。
途中に十分の休憩を含みまして、二時間半という長時間の芝居ではありますが、どうぞ最後までごゆっくりご覧いただければと思います。
この演劇が、観客の方々ひとりひとりと、どのような関係を切り結べるのか、たいへん楽しみにしております。
それでは、まもなく開演いたします。もうしばらくお待ちください。